取材日:2020年8月31日

夏の終わりに園原さんを訪ねました。今年の天候で、園原さんの冬季湛水不耕起栽培の田んぼはどんな姿をしているのだろうか、と思いながら。

いつものように園原さんは出会い頭に資料をくれました。「コロナを通して人間の生き方の大事なポイントがわかったから、しっかりよく読んで。」その内容は後半に紹介するとして、まずは、園原さんの田んぼとお米の様子についてお伝えします。

土壌が完成し、余計な草が生えなくなった
園原さんが借りて善玉菌のEM液を投入し、不耕起栽培、農薬化学肥料を使わないでEMボカシなどの有機肥料だけで、環境を再生しながら水田土壌環境を育てて今年で17年目だそう。3年目くらいから面積を拡大して、今では20枚の田んぼを管理しています。
毎年拝見しているコシヒカリの田んぼは今年で10年目くらい。その田んぼ、昨年は手押しの機械を使って田んぼの中に入って除草作業をしていましたが、今年は余計な草が生えなくなったので、一回も除草作業しなかったのだそう。普通、無農薬の田んぼって、稲より背が高い雑草があちこちに生えているもの何ですが、この田んぼを見渡しても、確かに雑草がまったく見あたりません。



「この田んぼは10年目で理想の水田土壌の環境がようやく完成しました。イトミミズが作るトロトロ層がしっかりできて、そこにしっかりと水を入れておくことで、田植えの時期に雑草が生えにくくなったんです。」
園原さんは、自然の力を借りて理想の環境に仕上げたんですね。


雑草は生えなくても、絶滅危惧種の水草が花を咲かせる
「ミズオオバコって知ってる?」今年はこの田んぼに絶滅危惧種のミズオオバコの可憐な花が咲いたんだよ、と嬉しそうな園原さん。環境再生型の田んぼだから、あくまでも稲の生育を阻害する草は取り除くけれど、稲が共生できる植物や動物は自然のままになっています。そして、米を収穫したあとは春になるまで水を入れないのがよく見る田んぼの風景ですが、冬期湛水(たんすい)といって、冬の間も水を張ると、田んぼの生き物が命をつなぎ、繁殖することができるようになります。そのため、年々、田んぼの生き物の種類や数が増えていくというのが園原さんの田んぼの特徴なのです。

ぜひ動画をご覧ください。


コロナと人間の生き方について考える
園原さんが手渡してくれた資料は、「表土とウイルス」というブログ記事でした。船橋真俊さんという協生農法を研究しているの方の文章です。
これを読んだ園原さんは、「船橋さんが言っている健全な表土というのは、微生物の多様性が土台にあることで生物多様性が正常に昨日している土壌。その土壌環境の中に人間の暮らしがあれば、病原体は凶暴化することなく、自然界の『多重の競争・共生関係の網の中』に取り込まれて静かになる。コロナウイルスとも穏やかに共生できるはずだ」と理解しました。それはまさに、園原さんが17年間やってきた環境再生型の農業そのもの。自分の体験をもとに発信し続けてきた「主食の米を大切にすること」の裏側にある人間の健全な暮らし方、食のあり方の追求と、船橋さんの結論が同じであることの発見です。
「弱肉強食は自然界の法則なんだから、免疫力を落として病気がちな生き方をしていることを問題視するべきなんだよね。だから、健全な表土がない場所で暮らしていることが問題だってこと。コロナウイルスが悪い訳じゃない。都会の人も、こういう田舎のような生活をすれば何も問題ないんだ。」



私の感覚では、今までは、「自然回帰した田舎暮らしって、人間がイキイキするし、なんかカッコいい」みたいなオシャレ感でオーガニックブームを起こそうというオシャレ路線と、地球環境や人間の健康を守るためには生物多様性を守る環境再生型の農業が大事だという真剣路線と、2パターンあったかなと思いますが、コロナショック2020をきっかけに、色々試してみたけど、結局行き着く先は自然な暮らしってことだね、という現実路線が生まれるといいなぁと期待しています。

園原さんの米作りの価値を改めて感じることになりました。ぜひ、皆さんも園原さんのお米を食べながら考えてみてください。

記事:植村


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